怖がりな兎さんとからかう狼さん
 あなたはそんなことを考えていたのですか?
 私が兎だとすると、海翔先輩はきっと・・・・・・。

「狼」
「あ?」

 そうだよ。狼だったんだ、この人!
 そういえば、幼稚園の頃に読んだ絵本と同じだ。小さな兎を狙う悪い狼。

「おい」

 狼さんの標的になってしまった?もう、どうすることもできないの?

「風音」

 嫌だ。普段はできる限り、男の人を避けているのに。こんな風にピッタリとそばにいられるのは・・・・・・。

「風音!」
「きゃっ!はい!!」

 ずっと考えていて、海翔先輩のことをすっかり忘れちゃっていた。

「さっきから呼んでいるのに、無視しやがって」
「す、すいません!」
「謝ってすむ問題か?」

 先輩は苛立ちを隠さず、腕を組んでいた。目を逸らしたいのに怖くて逸らせない。
< 11 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop