怖がりな兎さんとからかう狼さん
 愛葉お姉ちゃんが私と海翔先輩を見た。

「違うから、絶対違う!」
「照れ隠しか」

 あなたは余計なことを言わないで!

「なんだ、違うの?じゃあ、まだみたいね」

 相変わらず男の人は苦手ですよ。特に怖いのはこの人。
 そういえばさっき、この人のことを性格が悪いって言ってしまった。今、二人っきりになるのはまずい。

「あの、私も!」

 連れて行って欲しいと頼もうとするが、海翔先輩に邪魔された。

「いつか連れて行ってやる。お前ら、さっさと行けよ」
「そうさせてもらうね。海翔。またね、風音ちゃん」
「ちゃんとお土産にケーキを買ってくるから」

 いや、そういうことではなくて!私は一刻も早くここから抜け出したい!
 そんな私の願いはむなしく、叶うことはなかった。
 二人が階段を下りていき、見えなくなるまで、後姿を見送ることしかできなかった。
< 30 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop