怖がりな兎さんとからかう狼さん
 いつも感じる恐怖心はこのときはあまり感じなかった。

「好きになる?」

 そんなことを私にできるのか疑問だった。普段が普段だからなおさら。
 私は眠るまで海翔先輩のことばかり考え続けていた。
 あっという間に朝になっていた。

「眠いな」

 のろのろと起き上がり、支度をした。
 まだ寝ぼけたままで朝食を食べた。いつもより美味しさを感じられなかった。
 今日を無事に終えたら、次の日から休みになる。
 高校に入学してからすぐに友達ができたが、彼女達といるときは授業が終わったあとの休憩時間くらいだった。
 それ以外の時間は海翔先輩とずっといる。
 まわりはそのことを知らない。彼がどこかに行くときについて行こうとしている女子を見ると、恐ろしい表情になる。彼に好意を持っている人はそれ以上、近づこうとしない。
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