怖がりな兎さんとからかう狼さん
 遠くで見ていた私もそれを見ると、震えが止まらない。
 そんな私に目を向けて、目を細めて笑ったあと、そのまま消えていった。
 未だに怯えている彼女達をちらりと見てから、彼が向かうところへ私も走っていった。
 こういうことをもう何度も繰り返している。

「風音、早くしないと遅れるよ」

 愛葉お姉ちゃんの声で我に返った。

「うん」

 再度、鞄の中身をチェックしてから、家の外へ出た。
 学校では相変わらず海翔先輩の話題をしていた。一匹狼に見えるけど、本当は彼女がいるのではないかとか、どんな人がタイプなのかなど。
 いつも似たような話題ばかり耳にするので、他に話すことはないのかなと思っていた。
 海翔先輩と会うときは主に昼過ぎ。朝は今までで数えるほどしかない。
 今日も先輩に呼び出されている。授業中なのに、何度か寝てしまいそうになった。
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