怖がりな兎さんとからかう狼さん
 本当はそれだけじゃない。自分の中で男の人というものが少しずつ変わってきている。
 怖いのに。いつだって女を見下したり、傷つけることしかしないのに。それなのに。
 私は海翔先輩をみつめた。先輩は不意を突かれたように、目を瞬いた。

「どうして海翔先輩は・・・・・・」

 こんなにも私に執着するんですか?私には何もないのに。
 知らなかった。男の人の手が優しいなんて。

「私と一緒にいたがるのですか?」

 からかいやすいからか、単なる盾としてなのか、私という存在は・・・・・・。

「あっさり教えてもつまらないが、お前が考えているようなことではないとだけ言っておく」
「いつかは教えてくれますか?」
「さあな。とにかく今は寝ろ」

 海翔先輩の大きな手が私の目を覆った。
 視界が暗くなって、さっきより眠くなって、すぐに意識を放した。
 最後にきこえたのはおやすみの挨拶だった。
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