怖がりな兎さんとからかう狼さん
 あの日、あいつが俺の傍で寝ていて、落ち着いていた。
 寝顔を見て、髪を撫で、頬を片手で包み込んだ。そんなことを何度もしていたら、風音は擦り寄ってきた。
 起きたのかと思ったが、そうではなかった。小さな子どものようなしぐさに思わず笑みがこぼれた。
 しばらくしてから起きて、そのあとは逃げ出したあいつを追いかけた。いや、待ち伏せをした。

「そろそろ来るだろうな」

 俺の読みどおりに風音は現れた。俺を見たときのあいつの顔ときたら・・・・・・。
 そのときはグッと笑わないように顔を引きしめた。
 それから休日に一緒に過ごすことを約束させた。それは罰を与えるためではなく、新たな発見をしたかったから。
 人にはさまざまな表情がある。あいつの表情はいくつか見てきたが、笑顔を見たことはなかった。
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