怖がりな兎さんとからかう狼さん
 返事に困っていると、海翔先輩が声をかけてきた。

「俺のペット、いや、餌みたいなものでもあるな」
「人の妹を何だと思っているの?」

 愛葉お姉ちゃんは呆れ顔になっていた。

「だってこいつといると、時間なんて忘れられるから」

 悪びれる様子はまったくないと判断した。

「こいつと遊んでいいのは俺だけ」
「風音ちゃん、ごめんね。こんな弟で」
「いえ、大丈夫です」

 そう言ったが、あまり大丈夫ではない。常に振り回されているから。
 強い視線を感じたので、見てみると、海翔先輩がじっと見ていた。

「どうかしました?」
「お前さ、何でこいつと話すときは普通に話すんだ?」

 わけがわからないという顔をしていると、広樹さんがクスクスと笑い始めた。
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