怖がりな兎さんとからかう狼さん
 容易に想像することができたので、先輩の腕の中で震えた。
 待って、この状況に何であなたは私の頭に顎を乗せているんですか?重いし、痛い。
 体を捩ろうとしたら、本棚にぶつかってしまった。
 それほど大きい音ではないけど、やっぱり気づいたよね?

「何の音?」
「あぁ、ごめん。ちょっとカウンターに鞄をぶつけちゃって・・・・・・」
「なーんだ」

 どうやら同時にぶつけたらしく、こちらの音とは思わなかったみたい。

「そろそろ行こう?今日、予定があるんでしょ?」
「やばい!そうだった!」

 足音が遠ざかっていくのを確認したので、移動しようとしたが、しっかりと抱きしめられて動けなかった。

「あの人達、もう行きましたよ?それにいつまで顎を置いているんですか?」
「置きやすいんだ。それに邪魔をされた」
「痛いです」

 海翔先輩から溜息がきこえたと思ったら、柔らかい髪が私の頬や首をくすぐった。

「もうあまり時間がないな」

 よかった、今日はこれで自由になれる。

「少ない時間でどれだけ遊べるか試そうぜ」

 怯える私を上から覗きこんでいる。
 誰かに助けを求めたくても、無意味なことだと自分に言い聞かせた。
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