怖がりな兎さんとからかう狼さん
「凭れかかって、そんな表情して、それなのに男は嫌という。他の男が見たら、確実に誤解する」
「どういう・・・・・・」

 海翔先輩は私の話を遮った。

「男を、あまり俺を煽るな。風音」
「煽ってなんか・・・・・・」

 今度はチャイムに邪魔をされて、声をかき消されてしまった。

「遊びはここまでだ」

 何でこんな気持ちになっているのだろう。安心と残念な気持ちで板ばさみになっている。
 帰り道を二人で歩いて帰っていた。

「いいにおいだった」

 ギョッとして見てみると、先輩は空を見上げていた。
 何も聞かないでおこうと、先輩とは逆の方向に目をやった。

「あれ?知りたくないか?」

 声を出しかけたが、首を振って、なんとか押しとどめた。

「だったら、教えてやる」

 必要ないって言っているのに!
 海翔先輩は私の髪をすくい上げて、鼻を近づけ、ゆっくりと双眸を閉じた。

「風音」
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