怖がりな兎さんとからかう狼さん
 授業が終わったあと、鞄を持って、海翔先輩に会いに行った。空き教室にいなくて、私は席に着いて、二人分の弁当を鞄から出した。 
 五分、十分経っても、先輩は来ない。

「場所まちがえた?」
「いや、まちがっていない」

 声の主はもちろん、海翔先輩だった。

「汗かいていますが、走ってきたんですか?」
「さっきまで体育で試合をしていたからな」
「お疲れ様です。これ、約束の弁当です」

 黙って受け取り、もくもくと食べ始めた。激しい運動をしたせいか、いつもよりお茶を飲むペースが早かった。
 あっという間に食べ終わり、一息ついていると、外から雷の音がした。
 あまりにも大きい音だったので、過剰な反応をしてしまった。

「雷も怖いのか?本当に臆病だな」

 震えている私を見て、嬉しそうに笑っている。
 こっちが怖くて仕方がないのに、何で笑っているのですか?
< 78 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop