怖がりな兎さんとからかう狼さん
 気分が一気に憂鬱になっていく。ん?今、光った?
 俯いて目を瞑っていると、今度は髪に感触があった。
 何だろうと顔を上げると、先輩の顔が間近にあり、悲鳴を上げた。

「お前、うるさい。俺は不審者か?」
「だって、顔が近かったから。それに、何かしました?」
「さぁ」

 それはしたと肯定しているようなものだった。

「知りたかったら、これからも俺といたいって言え」
「嫌です。言いません」

 きっぱりと断ると、先輩は大袈裟に肩をすくめた。

「それじゃあ、会う度に抱きしめるか。それもいいな。抱き心地はいいからな」

 抱きしめようとしたのを見て、全身真っ赤になりながら、両手で押し返した。

「どうするんだ?どっちか決めろ」
「知りたくないので、どっちもしません」
「そんな堂々と嘘を吐かなくてもいいだろう」
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