怖がりな兎さんとからかう狼さん
 知らなかった。だいたいこの道は今まで通ったことはないから。

「お前、何で知らないんだ?生まれも育ちもここだろ?」
「そうですよ」

 そうこう言っている内に本屋に辿り着いた。

「大きい」

 これほどまで大きいとは知らなかったので、しばらく見上げていた。

「邪魔になっている。ほら、入るぞ」

 ふと横を見ると、通行人にぶつかりそうになっていた。
 先輩に軽く背中を叩かれ、ビクッと反応してしまった。
 けれど先輩はそんなことは気にせず、中へ入っていった。
 案内図を見てみると、文芸は三階だった。

「海翔先輩はどこへ行きますか?」
「三階。風音と同じところ」

 どうしてわかったのかな。私が行こうとしていたところ。

「小説をよく読んでいるし、じっと見ていたから」

 海翔先輩はトントンと三階のところを指した。
 エスカレーターで上の階へ上がっていき、女性文学のところへ向かった。
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