怖がりな兎さんとからかう狼さん
「弱みを握っているのは俺だ。もういいだろ」
「ちょっと!」

 女子生徒が海翔先輩の腕を掴もうとした瞬間、勢いよく振り払った。
 怖い表情になっている。

「邪魔」

 女子生徒は泣きながら、どこかへ去っていった。
 あれじゃあ、次の授業は出ないだろうな。

「こら、いつまで見ている気だ?」

 いつの間にか私の傍に来ていた。

「気づいていたのですか?」
「そりゃあな。しばらく落ち着いたと思ったのに、久々に嫌な奴にからまれた」

 あと少しでチャイムが鳴る。

「じゃあ戻ります」
「あぁ、行け」

 私は先輩のペットじゃありませんよ。
 先輩に背を向けて、教室へ向かった。
 もうすぐテストが始める。やりたくないとも思うし、さっさと終わらせたいとも思う。
 また最近眠れない日々が続いている。
 悪夢は見ていない。勉強をしているせいだから。
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