ねえちゃん
むくれた顔でそっぽを向いてると、プシュッと向かい側の席から音がした。
驚いて振り向くと、ねえちゃんがさっき冷蔵庫から拝借した缶ビールを開けていた。
「まだ飲むのかよ!?この酔っぱらい!」
けれどねえちゃんは俺の暴言に構わず、ご機嫌そうにビールを煽っている
「女が酒豪って可愛くねーぞ。そんなんだから2年も彼氏出来ねーんだよ」
「別にいいじゃない、可愛くなくても。そんなんで女を判断しちゃダメよ」
俺が何を言っても、今日のねえちゃんはずっと機嫌が良かった。
「貴文、ベンキョウ中だったんでしょ?部屋に戻りな」
しまいにゃつまみのピクルスをかじりながら 、ねえちゃんは俺に向かってそう言った。
「…分かったよ。あんま飲みすぎんなよ」
重い腰をあげて渋々キッチンから出ていこうとすると
「貴文、これあげる。夜食」
と言って、ねえちゃんがカバンから出した袋を投げて寄越した。
「さんきゅ。おやすみ」
「おやすみ」
廊下に出て、そっと袋を開くとそれは
バニラの香りがするクリームパンだった。