バイバイ南
☆
「百回死んでこい」
ドアをあけると、病院食をひっくり返して南(みなみ)が怒鳴った。
スプーンと箸が飛んでくる。
別によける気はなかったけど、床に散乱した皿やごはんを拾うために屈んだから、結果的には南の怒りのこもったそれらにあたらずに済んだ。
「来るなって言ったじゃん」
南はベッドの上で低く呟き、ぼすぼすと枕を殴り始めた。
いつものことだ。ちょっとでも気に入らないことがあると、あたり散らす。
一ヶ月前、入院してから始まったこの駄々っ子症候群のせいで、南の見舞いに来る高校生、つまり同級生は、今では幼馴染みという位置に収まっている僕こと品川(しながわ)正直(まさなお)ただ一人になってしまっていた。
自業自得だけど、寂しくはないだろうか。
食器を片し、窓際に吊るしてあるハンガーから雑巾をとった。
スープや野菜のクズをできるだけきれいに拭き取って、ため息をつく。