バイバイ南
ヒステリックに叫んで南は枕を振り回す。
点滴に血液が逆流しようと針がぶち抜けようと、僕を本気で殺したいみたいに、本当に本気でがしがし殴ってくる。
待て、やめろよマジで。
文句を言おうと口を開く。
振動で顎がガクガクして舌をかんだ。
いへぇな。
「なんでよけないの」
甲高い声で南が叫ぶ。ハゲたのを気にして毛糸の帽子をすっぽりかぶっているから、表情がよくわからない。鼻先から下しか見えない。
「おまえが殴るからだ」
顔をしかめながら枕を抱えた。
「自分でやめろよ。あたり散らして悪いって、ちゃんと思ってるんだろ」
南は枕を放して、撃たれたみたいにベッドへ倒れこんだ。
丸まってぎゅうっと耳を塞ぐ。
「出てって」
一方的に命令する。
「嫌だ」