空を見上げて【短編】
「ん?どうしたんだお前、あ、もしかして、教科書忘れたのかー?」

いつもは苛つく空の言葉も、今日は苛つかない。

「うん……」

素っ気ないあたしの返事に空は顔をしかめた。

「ったく、しょーがねぇなぁ。ほら」

そう言って空は教科書を机と机の真ん中におく。

「…え?」

「見せてやるよ」

「…ありがとう」

そんな優しくしないで…

今、誰かに優しくされたらあたし、泣いちゃいそうだから…

「………」

だからか、女子が憎しみの目で見ているのをあたしは気づく事ができなかった。


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