二面相
大樹は 嫌がるでもなく、私についてきた。
私と息子は 身の回りのものを ボストンバッグにまとめ、部屋を出た。
もちろん、貴重品など残しておくわけがない。
柏木は 私たちを止めるでもなく、クーラーのついた涼しい部屋で テレビを見て、笑っていた。
玄関のドアを閉めたとたん、大樹がため息をついた。
「あの人、ダメだね」
声がわりを間近にした、かすれた声で つぶやくのを聞くと 私の選択は間違っていなかったと感じた。
私と息子は 実家へと向かう電車に乗る。
夏の田舎の電車というのは、久しぶりに乗ると、それなりに風情がある。
白いレースのリボンのついた麦藁帽子を被り、赤いリュックサックを背負った、幼い女の子が、食い入るように 列車の窓から流れる景色を見ている。
時折、優しそうな母親に 何か聞いているが 母親は眠気でうとうとしている。
私と息子は 身の回りのものを ボストンバッグにまとめ、部屋を出た。
もちろん、貴重品など残しておくわけがない。
柏木は 私たちを止めるでもなく、クーラーのついた涼しい部屋で テレビを見て、笑っていた。
玄関のドアを閉めたとたん、大樹がため息をついた。
「あの人、ダメだね」
声がわりを間近にした、かすれた声で つぶやくのを聞くと 私の選択は間違っていなかったと感じた。
私と息子は 実家へと向かう電車に乗る。
夏の田舎の電車というのは、久しぶりに乗ると、それなりに風情がある。
白いレースのリボンのついた麦藁帽子を被り、赤いリュックサックを背負った、幼い女の子が、食い入るように 列車の窓から流れる景色を見ている。
時折、優しそうな母親に 何か聞いているが 母親は眠気でうとうとしている。