二面相
両親を泣かしても 自分を通したのは 私だけだ。


いまさら 親を頼るのも図々しく思うが、背に腹は変えられない。



人の親になってみて、自分の息子が 私の望まぬ道を進んだとしても、

例えば私のように家出をしたとしても、頼ってくれたら助けてあげようと思う。


きっと、私の両親も 同じであることを祈った。



「ただいま!」


田舎の家は 玄関の開き戸に 網戸がついている。
留守であろうと 鍵をかける意識がないようだ。


「は〜い」



出てきたのは 兄嫁だった。

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