二面相
私たちに 「お構い」をしないつもりだ。

麦茶の一杯でも出すだろう、普通。


でも 母の前では 愛想が急に良くなることを私は知っている。


きっと、兄にでもメールして、私たちの急な帰省を愚痴っているにちがいない。



「ママー!!」

玄関で声がした。


真っ黒に日焼けした、兄の長男が帰ってきた。



義姉は バツの悪い空間から、早く抜けたいとばかりに さっと立ち上がり、玄関に向かう。



「まあまあ、まだ足に砂がついてるじゃないの。待ちなさい!」


義姉は 駆け回る長男をお腹を抱えては捕まえられないとみて 私が出ていく。

「こら、待ちなさい。たっくん!」


「あ、麻子だ」



甥っ子は 私を呼び捨てにする。ひょっとしたら義姉が隠れて そう呼んでるのかもしれないと 最近思う。


甥っ子と息子は 顔を合わせると すぐに仲良く遊びはじめた。


甥っ子に比べ、色の白い息子を なんだか不憫に思ってしまう。


「あら、麻子、どうしたの?」


「来るなら電話くらいせんか」



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