二面相
両親が 揃って 汗をふきながら上がってくる。


「私、お茶入れますね」


義姉は 予想通りの反応。両親の前では愛想がよい。


「急にお前が 帰ってきたら、美紀さんも都合がつかんだろう」


父は 義姉の肩を持つ。

「どうぞお構いなく。お義姉さん」


嫌味に聞こえるように、言ってやった。







この田舎の家を飛び出して12年。


兄家族が 両親と同居し、家の中もすっかり変わってしまった。


居間にも 仏間にも それこそ応接間にまで 幼い子供たちの おもちゃやら、ベビーベッドやら滑り台やらで 物があふれている。


私がいない間に いろんな歴史がこの家にもあり、出て行った私なんて、すっかり蚊帳の外。


だが、縁側にぶら下がる風鈴は 昔のままに、風流な涼しい音を 聴かせてくれる。



「この家、築何年になるの?」



「結婚したときに建てたから、もう四十年になるかしら」



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