二面相
仏間には、シワだらけで化粧気のない祖母の笑顔があり、その遺影に手を合わせた。


「おばあちゃん、私、間違っとらんよね」


まだ赤ん坊の息子を抱え、不安になったとき、私は祖母によくそう尋ねていた。


「ああ、お前は間違っとらんよ。必ず、これで良かったと思える日が来る。ばあちゃんのようにね」


祖母は 決まって そう答えてくれた。


今日もまた、どこからか、祖母の声が聞こえた気がした。





父は 祖母に似て、どしんと構えたところがある。

私は 母に 似たのだ。


母は 昔から、思ったことを 考えもなく口に出すところがあり、私とはよく衝突していた。


思い込むと 後に引けない。だが、後で不安になったり 後悔したり、まったくどうしようもないのだ。



だから、私には、父や祖母のように、きちんと自分を持って まっすぐ生きていくような人が 側にいないと ダメなのだ。



「いつか、そんな人に、巡り会えるかなあ、おばあちゃん。やっぱり、私は一人は 無理かも」


そうつぶやいて 庭に視線を移した。


大樹が 幼い従兄弟たちと水鉄砲で仲良く遊んでいる。



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