イジワルするのはキミ限定*


私が行ったら、返って水沢くんの容体を悪化させちゃうんじゃないか。



そう思っていると、橘さんは「だいじょうぶですよ」とおだやかな声で言った。



「佳人様、柚子様のこととても気に入られています。だから、柚様が来られない方が、逆に佳人様にとっては容体を悪化させることになりますよ」



「そ、そうですかね……」



気に入ってる、と言っても私は水沢くんの“召使い”なわけだし……。



「それに、佳人様は一度言ったことは訂正いたしませんよ」



「……そうですね」



橘さんの言うとおり、水沢くんは一度言ったことは訂正しないにちがいない。



私は橘さんにそう言い、水沢くんの家に着くのをおとなしく待った。



< 168 / 350 >

この作品をシェア

pagetop