月下の誓約
「でもそれって結果的にはよかったですよね」
「まぁね。部隊長方は考えるより動く方が得意な方々ばかりで策を練るのも苦痛だったみたいだし、私も刀振るよりこっちの方が性に合ってるしね。こんなに返り血浴びたのは本当に久しぶりだよ」
和成は笑いながら血の付いた着物をつまんで見せた。
それを見て慎平は辛そうに眉を寄せて俯く。
着物から手を離し、笑顔を消して和成は静かに諭した。
「ごめん。君はまだ自分の目で血を見た事がないんだったね。情報処理班や軍師が血を見る事はあまりないけど、軍人として戦場にいるなら、人を斬る覚悟だけはしておいた方がいいよ。でないと君は生き残れないから」
慎平は俯いたまま、絞り出すように言う。
「実際、その時になってみないと本当のところはわかりませんが、そういう覚悟はしているつもりです。私がつらいのは血を見たからではありません」