月下の誓約
右近は微笑んで頷いた。
そして思い出したように言う。
「そういえば、嘆願書の署名がまわってたぞ」
「何の? 俺のとこには来てないけど」
「ばーか。おまえの減刑を願う嘆願書だよ」
和成は少しの間目を丸くして絶句した後、笑いながら尋ねた。
「そりゃ俺のとこには来ないか。おまえ署名したの?」
「おう! 一番でかい字で書いといたからな」
「でかけりゃ威力があるってわけでもないだろ」
胸を張って答える右近に、和成は呆れて嘆息する。
そして右近から目を逸らし、口の端で笑った。
「そうやってみんなが心配してくれるのはありがたいけど、やっぱ極刑だろうな。国を潰しかけたわけだし」
「おまえが”国外退去”とかありえないよな。内情知りすぎてるし」
「そうだな。打ち首か、よくて切腹かな」