月下の誓約
「まぁ、その時は塔矢殿に聞くか。そう言えば塔矢殿は?」
「前線にとんぼ返りしたらしいぞ」
「忙しい人だな。俺を殴りにわざわざ帰って来たのかな?」
「かもな」
二人で顔を見合わせて笑う。
少しして右近は、おもむろに和成を抱きしめた。
和成の肩に頭をのせて問いかける。
「また、会えるよな」
「どうだろうな」
和成が淡々と答えると、右近は涙声で再び問いかけた。
「会えるよな?」
和成は少し笑みを浮かべ、見え透いたウソをつく。
「あぁ。約束したもんな。一緒に遊びに行くって」
「おう! 一緒に飲みに行こうぜ」
顔を伏せたまま精一杯明るく答える右近に、和成はクスリと笑って尋ねた。
「女のいるとこか?」
右近は益々和成にしがみつきながら掠れた声でつぶやく。
「おまえがいればいい」
右近の涙が肩を濡らした。
和成は声を殺して泣いている右近の背中を優しく叩きながら空を仰いだ。
見上げる夜空には明るい満月が皓々と輝いている。
自分が死んだ時、どうかこの友がこんな風に泣かずにすみますようにと月に願った。