月下の誓約
和成が真顔で即答すると、紗也は泣き腫らしてむくんだ顔をさらに赤くして憤慨した。
「ちょっと! それが朝一に挨拶を差し置いて女の子に言う事なの?!」
反論する元気がある事に、和成はホッと息をつく。
「都合のいい時だけ”女の子”にならないで下さいよ。朝食をお持ちしました。お部屋にお運びしてよろしいですか?」
紗也はムッとした表情のまま、脇によけて和成を招き入れた。
「入って」
「失礼します」
部屋に入って机の上に膳を置くと、和成は改めて紗也の顔を見つめた。
「ずっと泣いていらしたんですか? 私が殴られた事はそんなにあなたの心を痛めましたか?」