月下の誓約
きまりが悪そうに頭をかく和成を見て、塔矢の表情は緩む。
「で、なんだ?」
塔矢が問いかけた途端、和成は表情を険しくして、手の平を塔矢に向け、言葉を制した。
和成が執務室の扉を勢いよく開くと、そこには中腰になって扉に顔を近付け、聞き耳を立てている紗也の姿があった。
冷ややかに見下ろす和成に、紗也は苦笑する。
「あ、ばれてた?」
「盗み聞きなど、君主のなさる事ではございません。仕事にお戻り下さい」
部屋の中を指差す和成に、紗也は食い下がる。
「内緒話なんかするから気になるんじゃないの」
「あなたには関係のない話なだけです」