月下の誓約


 和成はひとまず、ホッと安堵の息をつく。


「無闇に署名なさってはなりません。あなたと我々では署名の性質が違います」
「何が違うの? 私も和成を助けたいのに」


 本格的にべそをかき始めた紗也を見て、うんざりしたように和成は顔をしかめた。


「もう、いい加減にご自覚下さいよ。あなたは君主なんですよ。あなたの署名は国の署名なんです」


 すると紗也はピタリと泣き止んだ。


「だったら、私が署名すれば一発で和成の罪を不問にできるんじゃないの?」
「そういう私情で行動なさるのもお控え下さい。独裁者になりたいのでしたら別ですが。それだと民はついて来ませんよ」


 紗也は再び涙目になって叫ぶ。


「じゃあ、どうしたらいいのよ!」

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