月下の誓約


 途端に紗也は顔を上げて反撃した。


「なによ! 和成だって本当は気になって眠れなかったんじゃないの?! 目が赤いし、目の下にクマだってできてるし、お肌だって……」


 そこまで言って紗也は和成にかけ寄った。
 衿元を両手で掴んで引き寄せ、和成の顔を至近距離で凝視する。
 和成はあわてて紗也を振りほどいた。


「な、なんですか? いったい」
「それ、ヒゲ?」
「は?」


 驚いてまっ白になっていた和成の頭が動き始める。


「あ……まぁ、一日以上経ってますしね」


 あごをなでると少しザラザラした。

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