月下の誓約


「やだ。へん」


 顔をしかめる紗也に、和成は肩を落としてため息をつく。


「城に帰ったら剃りますよ」
「ダメ。今剃って」
「いいじゃないですか。私のヒゲがなにか迷惑かけたわけじゃなし」
「だって、かわいくないんだもん」


 言った直後、紗也はハッとして両手で口をふさいだ。
 和成の顔から笑顔が消え、いつもの不機嫌顔が現れる。


「かわいくなくったって一向にかまいません!」


 案の定、怒号が響いた。

 和成は紗也にクルリと背を向けた。

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