月下の誓約


 再び始まった言い争いに、塔矢は呆れてため息をついた。


「やれやれ」


 ふと気配を感じて塔矢が振り返ると、茶を運んできたと思われる年若い女官が、声をかける機会を失って困ったように二人の様子を眺めていた。
 未だに白熱している二人に、塔矢は声をかける。


「和成、そろそろ切り上げろ。こちらのお嬢さんがお困りだぞ」


 二人はピタリと言い争いをやめ、女官に注目した。
 和成がツカツカと女官に歩み寄る。
 そしてキョトンとしている彼女に声をかけた。


「ご苦労様です。あなたはこの後、何か用事はありますか?」
「いえ、特に言いつかった用事はございません」
「では紗也様が退屈していらっしゃるので、少しの間お相手をお願いします」
「かしこまりました」

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