月下の誓約
右近は笑わなかった。
冷めた目で和成を見つめる。
「それってモテモテ自慢?」
「なんでだよ。塔矢殿もそんな事言ってたけど、からかわれてるだけだろ?」
「キャーッ和成様かわいーっとか言われてんのか。うらやましいこった」
「あーっもう。やっぱ、おまえに話すんじゃなかった」
ふてくされてそっぽを向いた和成の顔を覗き込んで、右近は更にからかう。
「それで、女にうんざりするほどつまみ食いしちゃったわけ?」
「食ってねーよ! 裏で言われてるって聞いただけで、面と向かって何か言われた事はないし。第一女官に手を付けたら城に居辛いだろ?」
「まあな。それにおまえ、野の花にいくら騒がれても高嶺の花しか見てないもんな」
ニヤリと意味ありげに笑う右近を、和成は不思議そうに見つめる。
「なんだ、それ? 俺の理想が高すぎるって事?」