月下の誓約
右近は呆れたように小さくため息をもらした。
「自覚がないのか」
「何の?」
「紗也様だよ」
「あぁ」
ようやく納得したように、和成は頷く。
「確かに紗也様は君主としての自覚に乏しい。けど、何の関係があるんだ?」
まるっきり見当違いな和成の言葉に、右近はガックリと項垂れた。
「おまえ、頭切れるくせにこういう事にぶいよな」
未だに不思議そうな顔をして右近を見つめていた和成が、突然電話を取り出して時間を確認した。