月下の誓約


 右近は呆れたように小さくため息をもらした。


「自覚がないのか」
「何の?」
「紗也様だよ」
「あぁ」


 ようやく納得したように、和成は頷く。


「確かに紗也様は君主としての自覚に乏しい。けど、何の関係があるんだ?」


 まるっきり見当違いな和成の言葉に、右近はガックリと項垂れた。


「おまえ、頭切れるくせにこういう事にぶいよな」


 未だに不思議そうな顔をして右近を見つめていた和成が、突然電話を取り出して時間を確認した。

< 121 / 623 >

この作品をシェア

pagetop