月下の誓約
「やべ、あと二十分しかない。朝飯食わなきゃ」
「なんかさ、おまえ見てると、ヒゲ剃ったり飯食ったり、極刑かもしれない奴には思えないんだけど」
呆れたように言う右近に、和成は真顔で返す。
「塔矢隊じゃ朝飯抜いたら塔矢殿にげんこつ食らうんだ。処刑前にげんこつまで食らいたくない」
そう言って和成は右近に背を向けた。
走り去ろうとする和成を右近が呼び止める。
「和成」
和成が振り返ると、右近が手ぬぐいを投げてよこした。
「それ、貸しとくよ。まだ、いることあるだろ? 確実に俺のとこに戻って来るように名前書いといたから、城まで持って帰っていいぞ」
「あぁ。借りとく」
和成は笑って手ぬぐいを懐にしまい、食堂に向かって駆け出した。