月下の誓約


「それに、その”かわいい”顔が歪んだら俺が女官たちに恨まれる」
「それはよけいな心配です」


 和成は顔をしかめてふてくされたように横を向いた。


「戦には勝利したし、紗也様もご無事だったという結果も鑑みて、おまえの極刑はなしと決定した。ただし、全くの不問というわけじゃないぞ。最終的な刑罰は紗也様に一任という事になった」

「紗也様に?」


 塔矢は眉をひそめて唇に指を一本あてがうと「ここだけの話にしとけよ」と前置きして話し始めた。


「単刀直入に言うぞ。誰が一番悪いかって紗也様だろう。俺も最初はおまえが”目を離した”って言うから、てっきり戦に気を取られて紗也様が抜け出した事に気付いてなかったと思ってたんだ。おまえの隣にいたっていう兵士が、おまえは”目を離した”んじゃないって涙ながらに訴えてたぞ。だが、紗也様が悪いとわかっていても我々にはあの方を裁いたり罰したりはできない。おまえに罰を与えるという役目を担うことで紗也様がご自身の立場を理解し、ご自分の言動の重みを理解していただくことが目的だ。それをあの方がつらいと思うならそれはそれであの方に対する罰にもなるしな。おまえがどんな罰を食らうかは紗也様次第だ。そこは覚悟しとけ」

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