月下の誓約
塔矢から視線を外し、和成は目を伏せた。
「私が塔矢殿に殴られた後から翌朝まで、紗也様は私の身を案じてずっと泣いていらっしゃったようです。充分反省なさっているとは思います」
そして、俯いたまま自嘲気味に笑う。
「私は再三に渡って紗也様に砦の外には出ないようにお願いしました。けれど聞き届けてはいただけなかったようです。ようするに私の言葉などあの方にとっては取るに足らないものなのでしょう。塔矢殿は以前否定しましたが、やはりナメられているとしか思えません。まぁ、いい年してあの方と同じ目線でけんかしているようじゃ、ナメられて当然な気もしますが」
塔矢はおもしろそうに笑う。
「お? 少しは大人になったか?」
「笑い事じゃありませんよ。本当にナメられてるんですから。事あるごとに”かわいい”とか言われるし、男とか女とか思った事ないって抱きついたりするんですよ。注意してください」