月下の誓約
「だが、どうして紗也様は斬れない? 俺より楽勝だろう?」
「それは……わかりません」
あの時感じた不快感を思いだし、和成はうろたえた。
「女だからか?」
和成は身の回りにいる紗也以外の女を思い浮かべる。
君主側仕えの女官や城内女性官吏。
だが彼女たちが紗也に害をなす敵ならば、ためらいもなく斬れる気がした。
「違うと思います」
「なら、どうしてだ?」
矢継ぎ早に問いつめられても、和成には紗也が斬れない理由がわからない。
紗也が敵だと想像しただけで、嫌な気分が胸に広がるばかりだ。
黙り込んだ和成を見て塔矢はため息をもらした。