月下の誓約
「あなたもなの? あんな怒りんぼのどこがいいのか聞かせてちょうだい」
そう言って紗也は、女官を執務室に招き入れた。
実のところ和成は、城内女官たちの間で、密かに人気者だったのだ。
この女官も和成がお気に入りなのだろう。
柔らかそうな明るい栗色の髪に、まつげの長い大きな目、実年齢よりも随分と若く見える整った面立ちは、確かに女官たちの言うように、かわいいかもしれない。
けれど紗也は、少し不思議に思っていた。
女官たちの間で笑わない男として有名な和成は、紗也の前では笑わないどころか怒ってばかりいるのだ。
それは女官たちも知っているはずなのに。