月下の誓約


「自分の感情なのになぜわからないんだ。自覚がないのか、単に忠誠心が高いのか、それは俺にもわからないが、一応忠告しておくぞ。紗也様に対して特別な想いを抱いているなら、その想いは捨てろ。あの方は君主でおまえはその家臣にすぎない」


 和成は顔を上げて、不思議そうに塔矢を見つめる。


「それは心得ておりますが、特別な想いというのはいったい?」


 塔矢は呆れて再び大きなため息をついた。


「おまえ、わざととぼけてるんじゃないだろうな? 平たく言えば紗也様に惚れるなということだ」


 塔矢の言葉に和成は目を見開いた。
 突然心臓を直に掴まれ、鼓動が止まったような気がして、とっさに着物の胸元をつかみ息を飲む。

 その様子を塔矢は冷めた目で見つめながらつぶやいた。


「アタリか」

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