月下の誓約
紗也に出会ってからこれまでの出来事や想いが、頭の中をめまぐるしく駆け巡り、すっかり混乱してしまった和成は、頭をかかえて意味不明な言葉をつぶやく。
「え……? 俺……もしかして……あれ? ……そうだったのか? ……えぇ?」
「こら、落ち着け」
塔矢が大声で呼びかけた。
その声にビクリと反応して正気を取り戻した和成は、右近の言った”自覚”の意味を悟る。
同時にそれを塔矢に知られてしまった事が、どうしようもなく恥ずかしくなり俯いてみるみる顔を赤くした。
塔矢は額に手を当て、ため息まじりに言う。
「やれやれ、頭は切れるのにどうもおまえは人の心を推し量るのは不得手のようだな。自分の心すらわからないというのは重症だぞ」
「右近にも同じ様な事を言われました」
「おまえが自分で気付くまで黙っていようと思ったが、この調子じゃ俺が棺桶に片足突っ込んでも気付きそうにないし、それじゃ紗也様が気の毒なんで教えてやろう」