月下の誓約
まだ納得のいかない表情をしている和成に、塔矢はたたみかけるように続ける。
「紗也様はおまえ以外の者には抱きつくどころか指一本触れた事がないはずだぞ」
「そうなんですか? 私はてっきり誰にでも子どもみたいに抱きつくのかと思ってました」
「男とか女とか思っていないっていうのは、おまえが性別を気にせず甘えられる相手だという意味じゃないのか? それほど信頼されているということだ」
俯いて考え込む和成にチラリと視線をくれて、塔矢は一息つくと静かに問いかけた。
「それとも、男として見て欲しいのか?」
和成の身体がピクリと震えた。
そして俯いたまま遠くを見るような目で答える。