月下の誓約
「白状してしまえば、自覚する前はそう思ってた様な気がします。紗也様の私に対する警戒心のなさに苛立っていましたから。でも、自覚した今は男だと思われてないことが救いの様な気がします。私が変な期待をしないで済みますから」
「そうだな。想いを捨てろと言われても難しいとは思うが、せっかく信頼されてるんだ。それを裏切るようなマネだけはするなよ」
そう言って塔矢は立ち上がり、署名の束を和成に差し出した。
和成も立ち上がり、それを受け取る。
「これは記念におまえが持っとけ。今回は極刑なしとなったが二度目があるとは思うなよ。そのための戒めだ」
「わかりました。肝に銘じます」
「おまえの謹慎は今日までだ。各部署から刑が確定するまで待てないと苦情が殺到してな。明日からは公務に復帰しろ。大体おまえは元々俺の部下なのに、みんな勝手に使いすぎる」
ブツブツ言いながら部屋を出ようとする塔矢を和成は呼び止めた。