月下の誓約
渋々筆を取ると、紗也は書面を完成させ、塔矢に差し出した。
「向こう一年間二割の減俸と来年度昇給なし。これでいい? 三人分くらい働いてる和成には結構厳しい罰だと思うけど、甘すぎると受け取ってもらえないんでしょ?」
「確かに承りました」
塔矢は微笑んで、恭しく書面を受け取った。
受け取った書面を封筒に収め、小脇に抱えると紗也に問う。
「初陣はいかがでしたか?」
紗也は目を逸らして少し考えて後、答えた。
「いろいろと怖かった。一番怖かったのは、私の勝手な行動が和成の命を奪いそうになった事だけど、他にも目の前で人が死ぬとこも初めて見て怖かったし、和成がためらいもなくその人を斬ったのも怖かったし、それで血まみれになった和成も怖かった」
「全部、和成がらみですね」