月下の誓約
2.護衛官の不安と軍師の下策
紗也が形式上治めている事になっている杉森国は、大海に浮かぶ秋津島の中心にあり、島の中でも一番小さな国だ。
四方を好戦的な大国に囲まれ、常に侵攻の危機にさらされている。
小さな杉森国には特に目立った産業も資源もなく、お世辞にも裕福とは言えない。
けれど島の中心という要衝に国を構えているため、これまでも何度となく戦をしかけられていた。
このところ北に国境を接する沖見国が不穏な動きを見せていたが、数日前北方砦の物見から、沖見が進軍を開始したとの報告が入った。
明日には前線に到達すると見込んで防衛戦を張る事になった。
杉森の戦は常と言っていいほど防衛戦だ。
貧乏な杉森国は、人も金も無駄に浪費する戦を、自ら仕掛ける事は決してないからだ。