月下の誓約


「そういえば、血まみれの和成を見てみんなも驚いてたの。友達の右近も。それでみんな”怪我したのか”って聞くのよ。どうしてなの?」
「血まみれの和成というのは珍しいですからね」


 笑顔で答える塔矢に、紗也は首を傾げる。


「軍師だから? でも和成は今まで何人斬ったか覚えてないって言ってたけど」

「まぁ、軍師になってからは確かに人を斬ってませんが、あいつは返り血を浴びるのが大嫌いで、そりゃあ見事によけるんですよ」


 それを聞いて紗也は、椅子の背にのけぞりながら、大げさに声を上げた。


「えぇ? だって全然よけてなかったわよ?」
「もしかして、あなたは和成のすぐ後ろにいらっしゃいませんでしたか?」
「うん。いた」
「だからですよ。あなたに血がかかるから」
「あ……」


 紗也は目を見開いてしばし絶句する。

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