月下の誓約
塔矢は思わずこめかみを押さえると、軽く目を閉じて嘆息した。
眩しいほどの無邪気な笑顔が、和成にはかえって酷だろう。
そう思った塔矢は苦言を呈する事にした。
「ですが、抱きついたりなさってはなりませんよ。和成が困っていました。誰かに見られてあらぬ噂が立てば、和成が城にいられなくなります。それはあなたもお嫌でしょう?」
「うん。わかった」
少し不満げに眉を寄せたものの、紗也はすぐに好奇心に目を輝かせて塔矢に尋ねた。
「ねぇ、塔矢。和成の剣の腕ってどうなの? 返り血を見事によけるってすごい事なんでしょ?」
「そうですね。なかなかなものですよ。上の中……寄りの下ってとこですかね。私を特上とした場合ですが」
そう言って塔矢はにっこり笑った。