月下の誓約


 塔矢は他国にも名を知られるほど、杉森軍で最強を誇る剣の使い手だ。
 敵兵の間では鬼のように恐れられている。
 その事実は自身も認めていた。

 その塔矢に「なかなかなもの」と認められている和成の腕に紗也は驚いた。
 思わず机の上に手を付いて立ち上がる。


「そんなに腕が立つの?!」

「腕に覚えのない者をあなたの護衛にはできませんよ。実は軍師にしておくのも惜しいんですがね」

「じゃあ、なんで軍師にしておくの?」

「あいつと同等かそれ以上の剣の使い手は他にもおりますが、あいつと同等かそれ以上の軍師になれる者は他にいないんですよ」

「という事は、和成って頭は切れるし、腕は立つし、顔はかわいいし、超優秀な人材なんじゃないの」

「顔がかわいいのはあまり関係ありませんが、そういう事になりますね」


 苦笑する塔矢をぼんやりと見つめながら、紗也は力が抜けたように椅子に座り直した。

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