月下の誓約
14.真夜中の不審者
夕方、陽が沈みかけた頃、塔矢は再び和成の部屋を訪れた。
部屋の外から声をかけたら「開いてます」と普通に返事がする。
すっかり動揺から立ち直っているものと思い戸を開けると、薄暗い部屋の中で朝別れた時と同じ椅子に同じように腰掛けている和成が、壁を見つめてぼんやりしていた。
塔矢は眉をひそめて問いかける。
「おまえ、朝からそのままじゃないだろうな? ちゃんと飯は食ったのか?」
それを聞いて和成はクスクスと笑った。
「塔矢殿は私の食事の心配ばかりしますね」
腕を組み戸口にもたれて、塔矢は少し顔をしかめながら指摘する。
「おまえはいつも悩んだらそうやって考え込んだまま食わなくなるじゃないか。とりあえず灯りぐらい点けろ」
「あ、もうそんな時間でしたか」
今気が付いたかのように窓の外に目をやり、和成は立ち上がって灯りを点けた。