月下の誓約
塔矢は戸口にもたれたまま、刑が確定した事とその内容を告げた。
そして心配そうに和成を見つめて問いかける。
「俺はそろそろ家に帰るが、おまえ明日から公務に復帰して大丈夫か? もう一日休むなら、熱出したとか適当に言っておいてやるぞ」
「大丈夫です。ちゃんと食べましたし。働いてる方が余計な事考えなくてすむので、明日は公務に戻ります。でも、私を甘やかすなど、塔矢殿らしくないですね」
クスリと笑った和成に幾分安堵して塔矢も微笑んだ。
「らしくないか? 俺は元々優しい男だぞ」
「知ってますよ。朝食抜いただけで殴りますけどね」
二人は顔を見合わせて互いに吹き出す。
「気付かせない方がよかったか?」
塔矢が静かに尋ねると、和成は首を振った。
「いいえ。想いがもっと大きくなったら、イヤでも自分で気付いたでしょうし、そうなる前にわかってよかったと思います。今ならまだ、捨てる事ができそうですしね」